【ありすたる・いただき物のページ】
       
ツインシグナルRPG特別編   
  TWIN SIGNAL + ドラクエ3    
聖弦なる弓、邪を祓う杖。様より
 


 体重を乗せて剣を振る。
 どんっと背中をぶつけて背後を守り合う。
 シグナルとパルスの目が合った。
 暗黙に了解しあい、また敵の中に切れ込んでいく。
「大いなる恵みを‥‥」
 エララが祈る。
 剣と剣が激しくぶつかりあい、火花が散る。
「おいたが過ぎますわよ。メラゾーマ!」
 にっこりと微笑んだエルは手に持つ杖から灼熱の火球を弾き出す。
 手にじっとりと汗が滲む。
「コブラツイストはこうやってやるんだよ、パルス君」
 遊び人のオラトリオがモンスターの一人をはがい締めにする。
 魔法が炸裂する。マグマのような火の粉が草を焼く。
「みんな、吹き飛ばすよ。かばって。ライディーン!!」
 シグナルが大きく振りかぶって必殺の魔法を戦場に落とす。轟雷が鳴り響いて、
 モンスターは一掃された。
 みんな、会心の笑みを浮かべる。
 戦闘に勝ったのだ。
 軽い披露感を心地よく感じながら、がっちりと抱き合って勝利の喜びを分かち合った。


 16回目の誕生日。
 それが何を意味するのか。
 ほとんどの子にとってそれは数多く過ごしてきた誕生日の一つに過ぎなかっただろう。
 でも、ぼくにとっては16分の1以上の意味があるのだ。
 待ちに待った16回目の誕生日。
 それが、明日に来る。
 今はもう夜だから、寝て起きれば16回目の誕生日はすぐにぼくの前に訪れるはずだ。
 16回目の誕生日に何が起こるんだって?
 それはね、明日、王様に謁見できるんだ。
 この国では16歳にならないと王様に謁見できないのかって?
 そうじゃないよ。この国の王様はとても優しい人で、誰にだって、いつだって謁見させ
 てくれる。美人だし、器量がいいとは言えないけど‥‥、そう。王様は女王さまなんだ。
 でも誰も彼女のことを女王とは呼ばない。それは‥‥まぁ、ちょっと男勝りな所がある
 からかな。外見からはちょっと想像つかないけど、鬼みたいに強いんだ。
 この国はラヴェキングの個人的な武力一つで保っているんだよ。
 えっと、つまり、ぼくが明日、王様に謁見するのはもう何年も前から決まっていたこと
 なんだ。
 16歳になったら、王様に謁見して‥‥、
 それはぼくにとって何年も待ちわびたことなんだ。
 大魔王バラモス=クエーサーをやっつけるための旅に出ること。
 その許可をもらうんだ。
 一応、激励といくばくかの軍資金もくれるらしいし。
 この国公認の勇者さま御一行ってやつっだよ。
 ぼくはこの日のために生きてきたといっても過言じゃないんだから。
 エモーション母さんが言うにはね、ぼくは勇者なんだって。大魔王に苦しめられている
 世界を救うために勇者として生まれてきたんだって。
 すごいでしょ。
 えへへ、実はね、ぼくだって大変だったんだよ。お母さんは魔女だし、どこに行っても
 白い目で見られてきたし。誰だって子供のころはみんなと遊びたいじゃない。でもぼくに
 友達なんていなかったし、ううん、友達ができてもすぐに引っ越しちゃったり忙しかったりで
 長続きしなかったんだ。
 素晴らしい勇者になるための修行は辛かったし。
 はぁ。本当にしんどかった。たった6歳の子供にグリズリーと格闘させるんだもん。
 ちょっと異常だよね。よく生き残ったものだと思う。
 そういったとんでもない日々があっただけに、明日という日がとても感動的に思える。
 まぁ、実際は明日からさらなる艱苦が始まるんだけど、そんなことはまた別の話だね。
 まぁいいや。とにかく寝よ、寝よ。明日が楽しみだよ。
 ぐぅ〜。


「ほぅ。貴様がシグナルか」
 って、いきなり威圧してどうするんじゃい。(笑)
 と、ツッコミたいのをぐっと我慢して頭を下げつづける。まったく、ガラが悪すぎるよね。
 美人なのに。
「面をあげよ。
‥‥。なかなかいい面構えをしているな。それでこそあのエルの息子だ」
 ひじ掛けに肘を乗せながらラヴェキングはシグナルを品定めする。王様の中の王様。
 紫のゴージャスマントは、彼女のためにあるといっていい。さすがは世界最強の存在
 だと思う。
「今日が16歳の誕生日か。あの妖怪ぢぢいクエーサー‥‥、もとい、大魔王バラモスを
倒しに行くのだな。‥‥がんばるがよい」
 長々と話が続くのかと思ったら、いきなり速攻、終わってしまった。ラヴェキングは話
 飽きたとでも言わんばかりにそっぽを向いている。
 ええっと、もう下がれってことかな。
「あの〜、そういえば軍資金は‥‥」
 怒られないよね?恐る恐る聞いてみる。と、やはり忘れられていたらしい。
 思い出したかのようにお財布を取り出すと、そこから硬貨を一枚手渡した。
「銅貨‥‥?」
 確認するまでもなく鈍い土色の輝きはそれが一番安い硬貨である銅貨であることが
 わかる。これって‥‥?
「銅貨だ」
 身も蓋もない恐ろしい断定である。私的にはどうして銅貨なのか聞きたいんですけど。
「ふん。貴様なんぞの期待度はそんなものだ」
「って、ぼくは世界を救う勇者じゃなかったのかぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「黙れ」
 むぎゅっと足げにされて沈黙させられる。
「私程度に勝てないで世界を救うとか言わないでもらいたいものだな。大魔王ごとき私が
出張れば3日でカタがつくのだが、いかんせんご町内俳句友の会の慰安旅行があってな。
というわけでお前に任せるのだ」
 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。ぼくって近所におつかいに行くのと同レベルな
 わけ?さらに慰安旅行だなんて。温泉に浸かってぬくぬくとするつもりでしょ。
 そんなののために世界を滅亡の危機にさらさないでよ。
「なんだ?まだ不満でもあるのか。そうか、今ここで私に潰されるのと潔く魔王と刺し違
えるのとどっちがいいんだ?」
「はぃっ!がんばって戦ってきます〜」
 銅貨をポケットにしまってスタコラサッサと王宮を後にする。本当にもぅ。


 さて、次は仲間探しだね。いくらぼくでも一人で魔王は倒せないし。やっぱり仲間を作
 らなきゃ。う〜ん、どんな人がいいかな。やっぱり強い戦士は必要でしょ。それから魔法
 使いに‥‥、可愛いシスター!これだけは譲れないよ。可憐なシスターを探さなきゃ。
 シスターさえいれば他は誰もいらないってくらい大事だよ。
 仲間は‥‥酒場で探すものだよね。
 この城下町で一番の酒場に行く。名前は『アトランダムの腐れ総帥』。‥‥。
 ちょっとひっかかるものがあるけど、まぁいいか。
 きゅいっと扉を開けて中に入る。
 まだ陽は高いっていうのに、中には大勢の冒険者たちで賑わっている。
 これもある意味、大魔王のおかげでもあるのだ。魔王軍の侵略によって、それまでただ
 のゴロツキ以上、冒険者未満の存在だった人たちが多く魔王‥‥とまではいかなくても
 モンスター退治に名乗りをあげたのだ。もちろん、報酬とか財宝とかが目当てなわけだけど
 ね。というわけでどこの町でも情報収集や仲間を捜し求める冒険者たちで酒場はいっぱい
 なのだ。
 中に入るといかにもイカツイ顔の戦士風の男にギロっと見られる。きっと「若造が何しに
 きやがった」っていう感じなんだろう。強そうだけど、こんな怖い人はパスパス。
 とにかく、この手のことはマスターに聞くのが一番。カウンター席に進んで行く。
「いらっしゃい‥‥」
 定番の無愛想そうなマスターがそこにいる。すらっとした体に、さすがに荒くれ者の集まる
 酒場のマスターだけあって、そうとう強い気がする。って?
「クワイエット?なんであんたがここ(勇者の旅立ちの町)にいるんだよ。あんた敵キャラ
じゃないのか?」
 そうなのだ。どこかで見たことある(しかも強そう)と思っていたら、敵キャラだと思われて
 いたクワイエットが酒場のマスターなんてしていたのだ。黙々とグラスを拭いている。
 似合うって言えば似合うんだけど‥‥。
「いるからここにいる。本当は敵キャラのつもりだったんだが‥‥、酒場のマスターを一度
してみたくってな」
 したくってな。じゃない〜。そんなんで勝手にシナリオを変えないでくれ。
 つーか、変えるな。でもでも、いちいち苦情を言った所で通用する相手じゃないのだ。
 しかたなく、シナリオ通り言葉を継ぐ。
「強い仲間を紹介してほしいんだけど‥‥。まずは戦士だね。誰かいい人いない?って、
クワイエットはだめだよ?あんた強いけど、怖くて一緒に旅なんてしたくないよ」
 いきなりLV1で大魔神と戦うハメになった気分で恐る恐る聞く。いきなり、襲いかかって
 来ないよなぁ。
「貴殿が勇者シグナルか?」
 と、不意に誰かが声をかけてきた。振り向く。
 見るとカウンターの隣に置いてあった鮭の置物を相手に話しかけている黒い軽装鎧、
 長身、黒髪を一つに束ねて背中に届かしている戦士風の男がいた。
「あれがこの酒場最強の戦士。高分子セラミックソードの2刀の前には斬れないものは
ないという」
「私の名前はパルスだ。貴殿が大魔王クエーサー討伐の旅に出ると聞き及んだ。是非とも
仲間に加えていただきたい」
 あ、あの。なんで鮭の置物があるんです?
「返事は如何に?」
 まだ鮭の置物を相手にすごんでいる。彼っていったい?
「ちなみにパルスはド近眼の戦士だ。たまにああやって置物相手に話し込んでいる」
 さ、さいですか。
「あの〜、もう少しマシ、な人はいなんですか?」
「ふむ。それならもう一人、名前をエプシロンという。彼は豪腕の持ち主でツキノワグマ
でさえも一撃で倒すという」
 おお、それはすごい。ぜひ仲間にしたいです。
「でもそれも昔の話。今はどこをどうしたか体長数十センチに縮んでしまった。もちろん
攻撃力も皆無に等しい」
 なんじゃいそりゃ。ろくなのがいないんじゃないか。
「あの〜、勇者シグナルさんですよね?」
 また誰かが声をかけてきた。今度は何?と振り向いた瞬間、ぼくは息を飲んだ。
 亜麻色のロングヘア。ハート形の顔。ちょっぴり頬が赤らんでいるのがとてつもなく
 可愛いかった。
「はい♪」
「私はエララと申します。実は生き別れの兄を探しに行きたいんです。そのために修道院
も抜け出してきたんです。たいして役にたちませんが連れていってくれませんか?」
 実はもうぼくはエララさんの手を握っていた。考えるよりも行動が先に出ていたのだ。
「生き別れのお兄様ですか?
 ぼくに任せてください。世界の果てまで探しに行ってあげますよ」
 パーティを組むのはもう文句なしだった。
「戦士に僧侶。後は魔法使いでもいれば完璧なんだけれども」
 パルスは仕方なくパーティに入れた。だって腕は確からしいんだもん。実戦中に間違って
 味方を攻撃しなければいいけれども。
「はい。それなら私にお任せですわね。エース」
 エース?
「エース、あなたには隠してあったことがありますの。
 実は『母さん』は魔法使いだったんですわ」
 はい?
 もう何がなんだかわからなくなっていた。
「わったしにまっかせなさーい」
 今度はクビになった大臣、今はただの遊び人のオラトリオもやってきた。
『さぁ、日も暮れないうちに城下を後にしましょう』
 ちょ、ちょっとまてい!ぼくは仲間にするなんて一言も言ってないぞ。
 半ば拉致をされる形で酒場から連れ出されてしまった。もちろんその勢いで城下町も
 出たのは言うまでもなかった。

 よく、わからないんだけどぼくの旅は始まっちゃったみたい。
 勇者のぼくと、戦士のパルス。シスターのエララさんに、魔法使い兼母さんのエモーション。
 それから、仲間にするつもりもないのに遊び人のオラトリオ。
 強いんだか弱いんだかわからないね。
 これから、ぼくの長い旅が始まる。
 でもそれはまた別のお話。
 またね。
 
 

◆あとがき
 このお話は私の秘蔵のTSRPGっていう長編の流用なんですよね。大幅にリニューアルは
 してますけど。思いっきりネタばれになってしまったのが問題です。どうしましょ。まぁ、開き
 直るしかないかな。(笑)この続きは書く予定はないので悪しからず。(笑)
 原作の方はいつか載せるかもしれませんけど。ではでは。